クローン病の治療について思うこと。

 

 

 

昨日、同病の友人と話をしていて気づいたことがありました。

 

 

 

 

クローン病という病気は、原因不明の難病です。とても簡単に説明すると、小腸と大腸に潰瘍と呼ばれる傷ができる病気です。その傷がなぜできるのか、どうすれば治せるのかがまだわかっていません。一生治ることがない病気だと言われています。(詳しくはこちらのサイトをごらんください

個人差のある病気で、比較的軽くてすむ人は、上手に管理することで「ふつう」に近い生活ができます。重篤な方は家から一歩も出られないくらい「生きる」ことが大変です。その差については、またあらためて書かせていただきます。

 

 

潰瘍ができると言っても場所も違うし、傷の深さも人それぞれです。

大腸に多くできる人や、小腸にもできる人、腸管が狭窄したり、孔をあけるタイプの人…本当に千差万別です。治療法がないと言っても症状を緩和しなくてはいけません。そこでとられた治療が「絶食治療」です。食事を摂らないことで、腸管を安静に保ち、傷の治りをよくするというものです。退院後は栄養療法といってエレンタールという成分栄養剤を使い、普段の生活においても腸管内を安静に保ちます。これに加えてステロイドを使ったり、免疫抑制剤を使ったり、最近ではレミケード、ヒュミラという新薬が次々と開発され認可されています。

免疫力が強すぎる病気と言われていて、体内に入ってくるもの全てを「敵」とみなし、食べたものの栄養も何もかも体外に出してしまおうとするのです。そこで腸管内の免疫を下げるようなお薬が開発されているようです。(大まかにいうとそんな感じです)

 

 

 

さて、私の場合です。

私が発病した頃の治療は「絶食」+ステロイド+栄養療法。オンリーでした。

今のようにいくつもお薬はありません。

その治療はボロボロになった腸管を治してくれましたが、その治る過程に次なる苦しみが待っていました。

 

 

縦走潰瘍と呼ばれる縦に走る傷が、治っていく際にひきつれていくのです。

ふつうの人の腸管はふわふわと風船のような形をしていますが、その形はどんどん歪になっていきます。そして、治りながら腸管内は狭窄していきます。

これが腸閉塞を引き起こします。

 

私は狭窄タイプのクローン病なので、何度も何度も腸閉塞をおこしました。

米粒も通らない太さになってしまった腸管は、ちょっとしたことで詰まってしまいます。これを繰り返すことで、腸管から皮膚に向けて孔があいたり、腸管どうしが繋がったり、腸閉塞を破裂させたりします。

腸閉塞が破裂すると命にかかわるので、その前に狭窄した部分を切除(手術)することが必要です。しかし、手術で吻合した部分からまた病変が再発し、また腸管が狭窄していき、また手術となるのです。

 

一度目の手術は腸閉塞破裂、二度目は皮膚瘻、三度目は腸管内に孔があきました。

 

 

 

 

 

前置きが長くなりました。

 

実は、アメリカで新薬が認可されたのです。

武田薬品のお薬です。(こちらをご参照ください

私たち患者にとっては「希望のひかり」ともいえるニュースです。

 

次々と新薬が出てくるので、治療が選べる時代のように思えますが、まだまだ簡単ではありません。レミケードという薬(私が現在使っている薬)は劇的に治る薬ですが、使いたくても拒絶反応を起こしたり、発がん性を心配して使うのを嫌がる人がいたり、使っても数年で効果がなくなったりします。そして次なる薬はレミケードに比べて安全と言われる分、レミケードほどの効果はありません。ですので、新薬が出ることは私たちにとって「選択肢」もしくは「緩解期を長く保つ方法」が増えることにつながります。

 

 

 

 

 

そして昨日の話です。

武田薬品の新薬について話していて「クローン病を治す薬」は、私のような狭窄を繰り返すタイプには使えないことに気づきました。

 

こういう劇的に傷を治す薬は、劇症といわれる患者さんに使用されます。そして、私にとって劇症というのは「腸管狭窄」です。そして、この劇的に治す薬を使うと、傷が急激に治って腸閉塞をひきおこすのです。

 

 

 

 

7年前の3度目の手術前のことです。

腸管に孔があいて手術をしなくてはいけなくなりました。

私としてはもちろん手術はしたくありません。

劇的に効くと言われているレミケードを使ってほしいと主治医に頼みましたが、上のような理由(使うと腸管が閉じてしまって余計に危険)でだめだと言われました。

「やってみなくてはわからない」と言う私に、「とにかく今は手術しか方法がない」と先生は困った顔をされていました。

 

 

そして、手術を受けるために転院を希望した際、受け入れてくれた大学病院の消化器内科の教授が術後の治療についてある提案をしてくれました。

 

 

 

 

 

『術後の予防としてレミケードを使ってみよう』

 

 

 

とても斬新な治療法でした。

手術して孔のあいた部分と病を切除してから『病変のない腸管』にレミケードを投与すると言われたのです。もしかすると「再発予防につながるかもしれない」とのことで、テストケースとして行われることになりました。

7年も前のことですので、様々な意見が飛び交いました。病変もないのに、そんな劇薬を使うべきではないという意見が多くありました。私自身もとても悩みました。正直、どうすればよいのかもわかりませんでした。

 

そして、最後の最後に聞いたのが外科の執刀医の先生です。

違う観点からのご意見を聞きたいと、術前の説明時に尋ねてみました。

そこで言われたことは、その後の私の生き方に繋がる言葉でした。

 

 

 

 

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君はもう3度目の手術になる。

4度目はあってはいけないんだ。

4度目の手術になれば、短腸症候群になる可能性が高い。

そうなれば生活もすべて変わってしまう。

そんな中、君に言えることは

『どんな治療であれ、できることは全てやりなさい』ということだ。

 

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この言葉で決めました。

術後の予防のレミケード治療を。

おかげで7年経った今も薬の効果はつづき、とても元気に生きています。

同時期に東京でも同じテストが行われたようです。

そして、その人も元気でいると聞きました。

 

 

 

 

 

 

新薬が次々と認可されても「狭窄している人には使えない」。

と言われてしまえば、私たち狭窄タイプの患者はどうすれば良いのでしょうか。症状が劇症でなければ使えない新薬、そして劇症になれば新薬が使えない私たち。この矛盾に昨日気づきました。

 

 

 

 

願うのは、どんなタイプのクローン病でも治す特効薬。

もし、それが無理なのであれば、私が受けた治療をすすめてほしい。

術後の再発予防という治療が誰にでもよい結果を出すとは思えませんが、これも選択肢のひとつとしてほしいのです。

 

多くの患者は「選択肢」があることを知りません。

そして自分の意見を言うことすらできません。

 

 

 

患者さんに伝えたい。

自分のからだです。

自分に合った最高の治療を求めてください。

栄養療法でもいい、新薬でもいい、漢方でも整体でも自分の体調を維持できる治療を求めてください。求めれば、きっと未来は拓けます。

 

 

主治医の先生方に伝えたい。

病気を持ちながら生きていかなくてはいけない患者の未来を、一緒に考えてください。そして、何も知らない患者に「選択肢」を教えてください。

 

 

 

 

 

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最近、多くの患者さんの相談を受けています。

みんなどうしようもなくて困っています。

転院をすすめても勇気の出ない人もたくさんいます。

 

次回は転院について書こうと思います。

 

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コメント: 2
  • #1

    wani (水曜日, 17 9月 2014 11:07)

    生きるか死ぬかの選択肢で生きる方法の選択肢が多くなる事 共感します。

  • #2

    レミケ (火曜日, 14 10月 2014 15:38)

    クローン病による狭窄治療薬 STNM01が現在、第一段階が終わり、第二段階を行なっています。もう少しで完成しますから、頑張ってくださいね。